2016年7月13日水曜日

【ハンク モブレー】ソウル・ステーション

ウミネコプラズマンのサックスナビ 第六弾!

今回はハンク・モブレーのソウル・ステーションです。


ハンク・モブレーは1950年代から60年代に活躍した、親しみやすい音色のテナーマンで、訥々(とつとつ)とした語り口が特徴のジャズマンです。

これまでご紹介したジョンコルトレーン、ソニーロリンズ、デクスターゴードンらより、音色が丸いので、少しリラックスして聴けるテナージャズです。
ハンク・モブレーはその音色のせいか、愛すべきB級テナー、なんて言われることがありますがここまで端正に磨き上げられた音色で綴(つづ)られるジャズはA級です。
リラックスして聴ける、とは言ったものの、そこはジャズ黄金時代(人によって違いますが、私の場合は1950年代から60年代)に第一線で活躍していたジャズマンです。

ハンク・モブレー、実はスリリングなアドリブが持ち味なんです。




パーソネル
ハンク・モブレー(テナーサックス)
ウントン・ケリー(ピアノ)
ポール・チェンバース(ベース)
アート・ブレイキー(ドラム)
モブレーがこれまでマイルスデイヴィスのバンドやジャズメッセンジャーズで共演してきた、気心の知れたメンバーがモブレーのために集結しています。


1曲目「リメンバー」


いきなりモブレーの真骨頂です。
このテンポでこの音色、このメロディにこのアドリブ。
気の合うメンバーと最高のセッションができたんだな、と、勝手に微笑ましくなってしまうほどの名演です。
テナーサックスを吹いておられる方、是非この曲のテーマをコピーして吹いてみて下さい。
シンプルながら、音のアタック(発音)、リリース(止め)、リズムセクションとのタイミング、全てのバランスが完璧です。
ちゃんとこのテーマが吹けるようになると、ジャムセッションでのテーマ演奏が1レベル上がること間違いなしです。

スリリングでスウィンギー、愛すべきテナーマンへの第一歩です。


2曲目「ジス・アイ・ディグ・オブ・ユー」


ワクワクするようなイントロから始まるミディアムファーストの曲です。
軽快なリズムセクションの演奏を聴いていると、だいぶテンポが遅く聞こえますが、実際には結構早いです。二分音符=130前後ですので、ジャムセッションでやるとなると結構勇気が要ります。
それでもリラックスして聴けるのは、モブレーのテクニックと盤石のリズムセクションのおかげに他なりません。


3曲目「ディグ・ディス」


ブルージーなミディアムスィングです。ブルージーな、というかブルースですね。
サックスプレイヤーの大好物、ブレイクがたっぷり入った後は、モブレーのほっとするソロが続きます。この3,4コーラス目のブレイクソロはコピーしてそのままジャムセッションに持って行ってもカッコいいですね。レイバック加減や、ブルーノートの歌い方をマスターしましょう。


4曲目「スプリット・フィーリンズ」


ラテンテイストの入ったミディアムファーストの曲です。
ここでもモブレーはアドリブがあふれるように出てきます。
でもこの曲はピアノのウィントンケリーのソロが短いですがコンパクトながら光っています。
そして後半はアートブレイキーとの4バースも楽しいですね。


5曲目「ソウル・ステーション」


やっとタイトル曲が出てきました。
しかもミディアムスローの変形ブルース、たっぷりモブレー節を堪能して下さい。
しつこいくらいにレイバックして、同じフレーズを繰り返しても嫌らしくならないのがモブレーです。このバランス感覚は他のジャズメンにはマネできません、お見事。
このテンポでの8分音符のバウンス加減と音の処理に注目です。

6曲目「イフ・アイ・シュッド・ルーズ・ユー」

もし僕が君を失わなければいけなくなったら、、、、
そんなこと考えたくもないですが、人生とは時に残酷なものです。
それでも前を向いて生きて行こう、モブレーは切なくも力強く、そして優しく歌い上げています。私はこのテーマの歌い方、大好きです。特にテナーとしてはやや高い音域での付点4分音符の切なさがたまりません。
ここでもウィントンケリーは寂しさなんて吹き飛ばす快演を聴かせてくれます。
ほろ苦い寂しさと心地よい余韻を残して、このアルバムは幕を閉じます。

0 件のコメント:

コメントを投稿