2016年8月21日日曜日

まるごとサックスの本 著: 岡野秀明

ウミネコプラズマンのサックスナビ第11弾はまさかの書籍です。

その名も「まるごとサックスの本」です。


サックスナビと言いながら、CDしか紹介しておりませんでしたので、ここらで書籍の紹介です。
この本は、サックスプレイヤーでもあり、講師でもある著者 岡野秀明さんが、レッスンでの経験から、サックス奏者によくある事例とその解決策、レアケースな事例とその顛末まで紹介されています。
基本はサックス初心者、入門者あるいはこれからサックスをやってみようか考えている方向けの本ですが、サックス中級者が読んでも楽しめます。むしろ少しでもサックスをかじったことがある人なら、くすっとしてしまう小話が満載です。
うっかりいつも曲ごとに書いているクセで、章ごとに記事を書いてみました。
呼んで下さっている方とこの本との出合いのきっかけになれたら幸いです。

第1章 サックスの魅力――ビジュアルから音色に酔う

サックスは非常に幅広い音色のする楽器です。クラシックサックスの大家、ダニエル・デファイエとフュージョンアルトの申し子、デヴィッド・サンボーンが同じアルトサックスという楽器を吹いている、なんていまだに信じ難いのですが、サックスのいい音って?にひとつの解答を出してくれます。
かく言う私も、吹奏楽ではバリトン、テナーサックスを、ジャズではテナーサックスを経験しました。サックスを手にしてはや20年になろうとしていますが、自分の音が何なのか、どこにあるのか、わかりません。
この本を読んで、少し前に進めた気がします。

第2章 サックスを買う――楽器としては手軽らしい。サックス初心者が入手するには?

私は中古でテナーサックスを買いました。特に変なクセは無い楽器でしたが、前に使っていた人のクセが残る、と言うのは定説でした。
まことしやかにいまでも語られる、無機質なはずの楽器に、前使用者の魂が乗り移ってしまうかのような都市伝説に、終止符を打ってくれます。
内心自分が思っていた結論とほぼ同じだったので、妙に嬉しく、自分の感性も捨てたものではないな、と納得して読めました。

第3章 ところでアルト?テナー?――いざ、楽器を選ぶとなると悩みがつきない
サックスは半オクターブごとに音域の違う楽器がありますので、いざ楽器を買う、となると音域を選ばなければなりません。アルトかテナーかバリトンか、はたまたソプラノか、中高生なら所属の吹奏楽団において、席が空いている楽器、と言うのがすなわち選択肢になると思いますが、大学生や社会人の方が楽器を選ぶにあたり、面白い分類をしておられます。
私は圧倒的にテナー耳です。長年テナーサックスを吹いているので、そうなってしまった後天性のテナー耳だと思いますが、これから始められる方には非常に興味深いお話が読めると思います。

第4章 サックスを習う・学ぶ――楽器は買った。さて、どこで、誰に、どうやって?

サックスを習ってみよう、と言う方、増えてますね。素晴らしいことです。是非あちこちでやっている体験レッスンに飛び込んでみて下さい。
でもその前にこの本の4章を読んでから、体験レッスンに行って下さい。
感じること、変わると思いますよ。アマチュアプレイヤーの私が言うのも何ですが、レッスンの先生はクラシックサックスを履修されて音大を出た先生が多いです。ジャズ、ポップスの経験がほとんど無い方もいらっしゃいます。演奏を聴けばわかります。プレイヤーとしてはアマチュアですが、リスナーとしてはベテランの域に達している、と自負していますので、生で聴ければ、一曲ないし、テーマ1コーラスでもそのプレイヤーのレベルが判ります。
それでもレッスンに行けば、相応の知識と技術を習うことができるのは確かだと思います。是非この本を読んでから、新たな一歩を踏み出して下さい。

第5章 マウスピース病とリード症候群――悩まない人はいない?


副題にもありますが、サックスを手にして、マウスピース、リードについて悩まない人はいないと思います。個人的にはボロボロのヴィンテージマウス ピースを手に入れてしまい、気に入ってしまったので、マウスピースについては落ち着いていますが、リードについては悩みがつきません。良いな、と思って使 い続けていたメーカー、ブランドの品質が変わり、合わなくなったり、結局定番に戻ってきたり、いわばサックスあるある状態です。
そんな悩みにはこの5章を処方致します。
リフェイス、やってみたいなぁ。


第6章 リガチャーの重要性と音程についての知識
第7章 ストラップ見直しの提案と上達のための周辺知識


リガチャー、これも悩みのタネです。いろいろと試すも、結局戻ったり、ネジ変えてみたり。
どうにもテナーのマウスピースなのにアルト用のリガチャーじゃないと合わなかったり。
リガチャーあるあるがたくさんです。ちゃんと答えも導けるようになっていると思います。
個人的にストラップはこだわりがないので、購入時にオマケでつけてくれたストラップを使っています。最近になってハーネスとかいろいろ出てきましたので、参考になると思います。
その他、メトロノーム、チューナー、録音機材など、個人練習に大切なアイテムのあれこれを紹介しています。かなりディープなアイテムまで紹介されており、プロの方はこんなのも使って練習しているのか、と感心いたしました。

第8章 ジャズ・アドリブへのいざない――「ジャズ・アドリブに挑戦するぞ!」の方へいくつかのヒント
第9章 さらにいい音を求めて――奏法のヒント


ここはもう必読です。あえて触れません。

第10章 困ったときに――「あれ?おかしいな」のサックス・トラブルシューティング

信頼できるリペアマン、大事ですよ。
何かトラブルが起きたとき、例えばニードルスプリングが外れてしまった、とか、ネジがゆるんでしまった、という程度なら、自分で精密ドライバーや割り箸で何とかなりますが、各種調整や自分ではわからない異常を見つけ、直してくれたり、アドバイスをくれます。
私は某大手楽器店でいいリペアマンと出会うことが多く、良心的な値段で調整してくれました。
私のテナーサックスは、ものすごく微妙に歪んでおり、初歩的なことですが、見る人が見るとすぐわかります。リペアマンさんに楽器を見せて、「あ、ちょっと歪んでますね」と気づいたら、一次審査合格です。私はそんなところからリペアマンさんの力量を見極めたりします。
楽器の修理って、本当に奥が深いですね。

第11章 人生のパートナーとしてのサックス――楽器をクローゼット行きにしないために

せっかくサックスという楽器に出会え、手にできたのなら、人生を共に歩んでいくパートナーとして、楽しみたいではありませんか。サックスをやるうえで、少しすると忘れてしまいがちなアレコレを思い出させてくれました。
私は楽器に名前を付けていません。擬人化してしまうと彼(彼女?)を尊重しなければいけないようで。あくまでも楽器は楽器としてのアイデンティティを持たせておきたくて、あえて名前はつけていませんが、実はかなり多くのプレイヤーが楽器に名前を付けています。
やはり仲良くなりたい、大事にしたい、という気持ちからのようです。その気持ちを、大事にしたいですね。

最後に、巻末資料として、季節別(?!)オススメアルバムやサックスを聴く上での大定番を紹介しております。このブログで紹介しているアルバムもあります。
いいものはいい、自信をもって紹介できる姿勢が大事です。
この本はサックスの練習に行き詰ったとき、ちょっと読み返してみると、「あ、楽器はじめたばかりのときはこうだったな」とか、「お、この基本を忘れていた」とか、練習に対するモチベーションを高めてくれます。練習曲本の隣にならべておくと、きっとあなたの力になってくれますよ。

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