ジョー・ヘンダーソンの「ページ・ワン」です。
個人的にはジョー・ヘンダーソンのベストは、「モード・フォー・ジョー」というアルバムなのですが、ホーン(管楽器)が多く、ビブラフォンが入っている上に、曲もちょっと混みいっており、ジョーヘンのテナーを堪能するには、この「ページ・ワン」が最適と思います。
「ページ・ワン」も盟友ケニー・ドーハムとのツーフロント(2管編成)での収録ですが、しっかりジョーヘンを堪能できます。
このアルバムを秋の夜長とかに一人で聴いていると、なんだか切なくなってしまうので、十分ご注意下さい。
パーソネル
ジョー・ヘンダーソン(テナーサックス)
ケニードーハム(トランペット)
マッコイ・タイナー(ピアノ)
ブッチ・ウォーレン(ベース)
ピート・ラロカ(ドラムス)
1曲目「ブルー・ボッサ」
言わずと知れた名曲、このアルバムにも参加しているトランペットのケニー・ドーハムの作曲です。哀愁を帯びたマイナーキーのボサノヴァテイストナンバーです。
ジャムセッション入門で必ず通る曲なので、必聴です。実はジョー・ヘンダーソンよりもケニー・ドーハムの方が先にソロを取ります(ヘンダーソンの初リーダー作の1曲目なのに!)。
メロディにつかず離れず、作曲者としてメロディを大事に大事にアドリブを展開している、といった感じです。
場が温まったところでヘンダーソンにバトンタッチです。
ヘンダーソンはメロディお構いなしですが、ソロの構成が見事です。前半は静かに入って、後半盛り上げるところは盛り上げます。この曲がヒットしたのは、ヘンダーソンの音色がこの曲にマッチしていたのが大きいと思います。ハマり曲、です。
2曲目「ラ・メシャ」
コルトレーンファンなら、この曲のイントロを聴くと、今にもコルトレーンが吹き始めそうなマッコイのピアノが印象的です。しばらくはドラムがほとんどリズムを刻まないで進む、浮遊感のあるバラードです。
これもヘンダーソンの音色が非常に美しく響きます。
せっかくのバラードです。ヘンダーソンとドーハムのロングトーンでのビブラートのかけ方の違いに注目して聴いてみるとより深くこの曲を楽しめると思います。
ヘンダーソンは控えめながら要所要所でビブラートをかけますが、ドーハムは最初からしっかり目のビブラートを多用しています。もちろん楽器の特性もあるとは思いますが、歌い方、を研究する第一歩として、ビブラートに注目してみて下さい。
3曲目「ホームストレッチ」
ファーストスウィングです、店テンポが早い上にアウフタクト、シンコペーションも多用されており、一聴するとシンプルなメロディですが、譜面に起こそうとすると結構面倒な曲です。ヘンダーソンの独特のノリがよいですね、遅れているようで遅れない、これがヘンダーソン独特のノリで、ジョーヘンサウンドの要です。
4曲目「リコーダ・ミー」
ラテンテイストのこの曲もジャムセッションで時々演奏されることがありますね。ヘンダーソンはこの曲でもダークな音色を武器に、とらえどころのないというか、上へ行ったかと思えば下へ行く絶妙なアドリブを聴かせてくれます。
フロント2管がバッキングに入り、マッコイのアドリブがフィーチャーされています。マッコイのはラテンテイストの曲が得意ですね。
淡々とリズムを刻むベースとドラムスの裏方っぷりもしっかり聴いてやって下さい。
5曲目「ジンリキシャ」
人力車です。どうやらヘンダーソンはこの曲を作る前に日本に来たことがあるらしいです。異国情緒漂う不思議なジャズに出会えます。
でもどう聴いても日本人には人力車っぽくは聴こえません。もう少しアジアよりというか、少し中東系というか、、、これから聴く方のためにあまり私のイメージを詳しく書かないことにします。
ぜひ、どんなイメージが浮かぶか、想像力を膨らませて聴いてみて下さい。
この曲でも上へ下へ、ときにブレーキをかけたかのようなスタッカートが出てきたりするジョーヘン節が健在です。妙にこの曲調にマッチしています。このアルバムが評価されているのにはヘンダーソンのテナーに合う曲がずらりと並んでいるのが要因のひとつである、といえそうです。
6曲目「アウト・オブ・ザ・ナイト」
ミディアム・ブルースですね、ブッチ・ウォーレンのツービートが渋いです。テーマは16分音符のターンと、三連符の吹き分けをしっかりするのがかっこ良く吹くポイントです。
この曲ではヘンダーソンは後半にソロを取っていますが、ソロの前半は抑えめに、ブルースのⅡ-Ⅴ部分でヘンダーソンらしい怪しげな音使いをちらつかせます。
後半に行くにつれ、音数も増え、怒涛のジョーヘン節を聴くことができます。
実はマッコイのバッキングも見事で、上手くヘンダーソンを誘導しているようにも聴こえます。マッコイのピアノとヘンダーソンのソロの浮遊感と相まって、アルバムを締めくくるにふさわしい雰囲気をつくっています。
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