スタン・ゲッツとライオネル・ハンプトンの「ハンプ・アンド・ゲッツ」です。
スタン・ゲッツはジョアン・ジルベルトと共に吹き込んだ「ゲッツ/ジルベルト」が余りにも有名かつ素晴らしいのですが、ここは必ず押さえておいてもらうとして、ゲッツのテナーサックスをじっくり味わうためにこの「ハンプ・アンド・ゲッツ」を紹介します。
ライオネル・ハンプトンはジャズヴィブラフォンの名手です。ジャズヴィブラフォンはかっこいいのですが、何と言ってもプロのヴィブラフォンプレイヤーが少なく、有名どころと言えば、このライオネル・ハンプトンと、モダンジャズカルテットのミルト・ジャクソン、時代は現代に来てゲイリー・バートンあたりでしょうか。
ビブラフォンジャズは涼し気な音色なので、暑い夏にピッタリです。
パーソネル
スタン・ゲッツ(ts:テナーサックス)
ライオネル・ハンプトン(vib:ビブラフォン)
ルー・レヴィ(p:ピアノ)
リロイ・ヴィネガー(b:ベース)
シェリー・マン(ds:ドラムス)
1曲目「チェロキー」
ジャムセッションでテンポの速い曲をやろうか、となるとよく選ばれる曲です。ただし、このテイクはテーマ無しでいきなりアドリブソロから入って、そのままアドリブ合戦で終わるので、最初は何が起こったのかわかりません。
一応テーマはドラムイントロのあと、16小説×AABA形式で1コーラス分演奏されているのですが、崩され過ぎてもはや原型をとどめていません。
この曲をやり慣れている方にはコード進行でわかるので、33小説目くらいで、ニヤリ、とする方もいるかも知れません。
実際のステージでも、挨拶代わりのオープニングやアンコールにもうひと盛り上がり、なんて時にテーマ無しで演奏されることもあります。エンディングくらいはテーマを吹いたりするもんですが。。。
プレイヤーだけでなく、ジャズファンなら覚えておいて損は無い曲です。いや、是非覚えておいて下さい。
スタン・ゲッツはノリが非常にタイトで、日本人好みだと思うのですが、その音色のためか、「ゲッツ/ジルベルト」の影響か、インプロヴァイザー(即興演奏家)としての評価が低かったりします。ですがこの「チェロキー」のアドリブを聴けば、ゲッツの完璧なまでのインプロヴァイズの虜になること間違いなしです。
注)このブログでは筆者の気分で「アドリブ」と「インプロヴァイズ」を使い分けていますが、「アドリブ」も「インプロヴァイズ」も即興という意味です。一応前者がイタリア語、後者が英語です。イタリア語でなくラテン語だ、という方もいらっしゃるかと思いますが、ここでは音楽用語としての「アドリブ」を指しておりますので、イタリア語ということで。
2曲目「バラードメドレー〜テンダリー~ニューヨークの秋~太陽の東(月の西)~言い出しかねて〜」
ゲッツのサブトーンをじっくり堪能して下さい。私はゲッツのさり気なくキラリと輝く装飾音符が好きです、またゲッツはビブラートも上手く、非常に高精度で、音程の揺れだけでは無く、強弱も上手く使って表現しています。
さらにバラードではタンギングの種類の豊富さもチェックしましょう、ハーフタンギングと呼ばれるいわゆる「のむ音」の効果を上手く使っています。
最近ではデビッド・サンボーンがバラードでよく使うハーフタンギングテクニックですが、ゲッツが元ネタだったのかも知れません。
3曲目「ルイーズ」
バラードでしんみりしたあとは。リラックスできるミディアム・ナンバーです。ここではハンプトンがテーマを演奏します。
少し単調になりがちですが、こういう曲もないとアルバムとしてバランスが悪いですからね。
4曲目「ジャンピン・アット・ザ・ウッドサイド」
ビッグバンドジャズをお好きな方にはお馴染みの曲です。ファーストスウィングのソロ回し曲としてベニー・グッドマンやカウント・ベイシーなどのジャズ・オーケストラで演奏されました。ゲッツもビッグバンドジャズ経験者ですので、どこかで演奏したことがあるのでしょうか、快調にアドリブを展開します。そこかしこに往年のテナーマンの歌いまわしを感じさせるフレーズを織り交ぜつつ、完璧なリズムのゲッツ節を聴かせてくれます。
同じ曲を違うジャズマンが演奏しているのを聴くのは非常に勉強になります。
それにしてもこの曲後半のハンプトンとゲッツとのバトルはテンションが上がってしまいますね。
5、6曲目「グレイディーズ(別テイク、本テイク)」
同じ曲が2回続けてかかります。ミディアムテンポのブルースです。出だしのゲッツの歌い方が全く同じなので、曲戻しボタンを間違えて押してしまったのかと思いますが、安心して下さい、別テイクですよ。
6分17秒の方は、ビブラフォン→トロンボーン→ピアノ→テナーサックスの順でソロをとります。こちらの方が、ゲッツのアドリブのキレがよいです。
その後1コーラスごとのソロ交換×3回でテーマに戻ってきます。1コーラスじゃなくて4バースの方が盛り上げるような気がするのですが、これはこれで大人っぽくて良いと思います。
7分47秒の方は、ビブラフォン→テナーサックス→ピアノ→1コーラス交換×5回(たぶん)、ん?トロンボーンどこ行った?てゆーかさっきのトロンボーンどっから来た!?
6分の短いテイクの方はちょっとリハーサル的なテイクでしょうか。ジャズは得てしてリハーサルのほうが良い演奏が出てしまうことが多々あります。私も何回も経験したことがあります。私の場合、それだけ演奏の質にムラがあって、再現性が無いのが大きな理由なのですが。。。
7曲目「ヘッドエイク」
半音階の進行が出てきたりしてブルースっぽくないですが、形式としてはブルースでしょうか、難しいことを考えると頭が痛くなるといけないのでやめておきましょう。ゲッツの後半のソロがアツくて良いです、ロリンズみたいなフレーズも飛び出します、かと思えばゲッツらしいフレーズの応酬でハンプトンとソロ交換します。
ここでも謎のトロンボーンが出てきます。ハンプトンの後にじわ~っと入ってきて、2コーラス弱のソロを取って去って行きます。実は前テーマ、後テーマもゲッツとユニゾン(同じメロディを演奏すること)で演奏しています。録音状態のせいか、完全にテナーサックスに埋もれています。
どことなくカーティス・フラーの音に似ている気がしますが、誰なんでしょう?
気になってしまいました、どなたか教えて下さい。
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