ソニーロリンズの「ザ・ブリッジ」です。
1950年代に大活躍したソニーロリンズが、調子を落として1959年に活動を休止してから3年、見事にカムバックしたときのアルバムです。
活動休止中、ブルックリンの橋の下で練習を重ねていた、という逸話はあまりにも有名です。この逸話を知ってか知らずか、日本でも若いサックス吹きが、橋の下で練習をしているのを稀に見かけます(最近は見ませんね)が、日本の橋は規模が小さく、音が反響してしまい、あまり良い練習環境とは言えません。今の日本は交通量も多いので雑音も多く、橋の上を自動車が走るなら、排気ガスの影響も心配です。
大活躍した50年代には、泣く子も笑う「サキソフォン・コロッサス」や、ヴィレッジ ヴァンガードというこれまた泣く子もウキウキするライブハウスでのライブ盤「ア・ナイト・アット・ザ・ヴィレッジヴァンガード」があります。
ソニーロリンズは、「サキソフォン・コロッサス」に代表されるようなピアノ・ベース・ドラムスを従えたカルテット(4人組)で名演を数々残していますが、「ア・ナイト・アット・ザ・ヴィレッジヴァンガード」ではサックスとベースとドラムスというピアノレストリオで出演し、大名演を繰り広げました。
ピアノがコードを弾かなくなることで、よりサックスが自由にアドリブができるようになるのでは、と考えた、と言う説が一般的です。
個人的には単に一人メンバーが少なくなれば、ギャランティも増える、、、なんて下心があったのか、とも思います。
そして今回ご紹介する「ザ・ブリッジ」では、サックス、ベース、ドラムスになんとギターをを加えたカルテットで演奏しています。
パーソネルは
ソニー・ロリンズ(テナーサックス)
ジム・ホール(ギター)
ボブ・クランショー(ベース)
ベン・ライリー(ドラムス)
(5.ゴッドブレスザ・チャイルドのみドラムスがハリ)
ギターが入ることで、アルバム全体にクールで都会的な雰囲気が漂います。ロリンズのテナーが温度高めなので、ブレンドするとちょうど良いバランスになります。
収録されている曲は
- ウィザウト・ア・ソング
- ホエア・アー・ユー
- ジョン・S
- ザ・ブリッジ
- ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド
- ユー・ドゥ・サムシング・トゥ・ミー
何と言っても1曲目の
「ウィズアウト・ア・ソング」でのロリンズの楽しそうな演奏が印象的です。
以前よりぐっと男らしくなった音色と、豪快なグルーヴが聴きどころです。
50年代の計算し尽くされたかのような歌うアドリブも良かったのですが、このアルバムでは自由奔放に歌うロリンズが聴けます。
ギターもリズミカルに、華を添えています、このギターを聴くと、どうしてもニューヨークはブルックリンのイメージが出てきてしまうのです。
ロリンズが修行した橋は確かにブルックリンでしたが、そのイメージ以上に、オシャレなカフェなどで流れているオシャレ系ジャズは、たいていこういうギターの音です。
60年代から、オシャレなブルックリンっぽさ、っていうのは変わらないんですね。
そしてこのアルバムのもうひとつの聴きどころは
「ザ・ブリッジ」ロリンズの速吹きが堪能できます。このタイム感こそロリンズがロリンズたるアイデンティティと言っても良いと思います。ここでのロリンズはノリノリで吹いていますが、そこかしこにホンカーと呼ばれるロックジョーデイヴィスやアーネット コブらの影響が聴いて取れます。テナーサックスと言えばホンカー達を差し置いて語ることはできません。彼らについてはまた今度ご紹介します。
聴きどころ、もうひとつでは済みませんでした。「ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド」です。
どこまでも続くブルーの世界。
みんなと楽しく晩ごはん食べたりして過ごしてから、一人暮らしのアパートに帰って来た時、これをうっかりかけてしまったら、孤独と哀愁に満ちたひとときを過ごさねばなりません。これはもうとにかく独りで聴きたい曲ナンバーワンです。ギターがこの哀愁をさらに増幅させていて、ロリンズのテナーがむせび泣きます。音量を上げれば上げるほど、孤独と哀愁は増幅していきますので、気をつけて下さい。
今回ご紹介するにあたり、今一度聴き直しましたが、本当にいいアルバムです。
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